
2026年(令和8年)8月20日、東光寺(静岡市清水区横砂)にて小中学生を対象とした「寺子屋体験」を開催いたしました。
今年度は23名の小中学生が参加し、朝の8時30分から17時まで、1日を通してお寺の様々な行事を体験してくれました。
午前8時30分、本堂に集まった子供達と一緒に開会式が始まりました。
お寺という非日常の空間に少し緊張気味の子供達に、まずはこのような質問をしてみました。
私「去年もここに来た人?」
参加者「はーい」(半分くらいの参加者が手をあげました。)

私「ありがとう。じゃあ、お寺に初めて来た人はいる?」
3分の1くらいの子供が手を挙げました。
私「そうだよね。なかなかお寺って来る機会がない場所だと思います。でも、日本全国にお寺はたくさんあるんです。みんなの周りにはコンビニがたくさんあるよね? でも、日本の場合はあのコンビニよりもお寺の方が多いんです。」
参加者「え、そうなんだ!」
私「ちなみに、コンビニに行ったことがない人って、いる?」
参加者「いなーい」
私「そうだよね。でも、コンビニよりも数がたくさんあるお寺に行ったことがない人はいる。これがもったいない!」
お寺は決して怖いところではありません。
私は、色々なことを勉強できる場所であることを知ってもらいたいと思っています。
では、お寺で一体どんなことを勉強するのでしょうか。
開会式ではその学ぶことの例として、お釈迦様を含めた過去の7人の仏様が共通して説いたとされる、
『七仏通戒偈【しちぶつつうかいげ】』
という言葉を紹介しました。


諸悪莫作【しょあくまくさ】(悪いことはせず)
衆善奉行【しゅぜんぶぎょう】(善いことする)
自浄其意【じじょうごい】(自分の心を浄める)
是諸仏教【ぜしょぶっきょう】(これが仏の教えである)
悪いことはせず、善いことをする。
「そんなことは分かっている」と大人でも子供でも思うかもしれません。しかし、これを実践し続けることがどれほど難しいことか。
寺子屋体験の際のトイレのスリッパも同じです。
揃えた方がいいって分かっている。
言われなくても分かっているのに、揃えられないことがあります。
頭で分かっていても、なかなか行動に移せないのが人間です。
目の前に誘惑があれば、ついつい負けてしまいます。
分かっているのに失敗をしてしまう。
私自身も、日々の生活を振り返れば反省することばかりです。
だからこそ、開会式では次のようなことも伝えます。
みんな、今日着ている服は使い終わったらどうする? 洗うよね。
心も同じなんです。
生まれた時は、悪いことをしない、とても綺麗な状態です。
だけど、普段の生活の中にいると、どうしても汚れてしまう。あれも欲しい、これも欲しい。あいつのことが好きだ、嫌いだ。そういう心の揺れ動きによって心がだんだん汚れてくる。
だから、お洋服と同じように、心のお掃除もするんです。
普段の生活の中の誘惑を忘れ、当たり前にできるはずのことを時々思い出してみる。
悪いことをしない、善いことをする、自分の心を清らかにする。
その「心のお掃除」を1日かけて練習することが、この寺子屋体験を開催している大きな理由だと知ってほしいのです。
そして、その「心のお掃除」の実践は、この開会式の中からすでに始まっています。
その1つが、本尊様へのご挨拶です。

開会式では全員にお参り(ご挨拶)のために、ご焼香【しょうこう】をしてもらいます。
ご焼香の前に、子供達に聞いてみました。
私「これ(お線香)、何のためにするの?」
子供「神様を呼ぶ!」
子供「『俺ここにいるぜ』って狼煙【のろし】を上げる!」
子供達の自由な発想には、いつも驚かされます。
私「実は焼香や、お線香って良い匂いがするでしょう。良い香りを仏様にどうぞとお供えしています。それと同時に、昔のインドはとても暑かったので、その良い匂いで自分をきれいにしてからお参りをするために準備をしていました。」
良い香りをプレゼントすると同時に、自分もその煙で綺麗になって、綺麗な心でお参りをする。これも、仏様と向き合う前の大切な「心のお掃除」の実践であることを伝えました。
その意味を知ってもらった上で、子供達には一人ずつ順番に仏様の真正面へと進み出てもらいました。


おうちの人から預かってきた大切なお布施の入った封筒を、お供えします。
そして、ご焼香をして、静かに手を合わせて礼拝をします。
その後、今日1日お寺で使う「坐禅手帳」と筆記用具を、仏様から受け取ってもらいました。
お渡しした坐禅手帳には、真っ白なページがあります。
決して不良品ではありません。白紙には勉強したことや、自分が「これを頑張ろう」と決めた目標を書き込んでいくためのページなので。
子供達は、配られた今日の予定表のシールを貼りながら、
「一生懸命坐禅をする」「お掃除を頑張る」
など、思い思いの目標を書き込んでいました。

子供たちの前に立ち、「心のお掃除をしましょう」と話をしている私自身も、まだまだ修行中の身であり、放っておけばすぐに心が散らかってしまう未熟な人間です。
ご焼香をして仏様に静かに手を合わせ、真剣な表情で真っ白な手帳に向かい合う子供達の姿を見ていると、「私自身も、この子供達と一緒に心のお掃除をさせていただかなくては」と強く自戒させられます。
お寺は、子供にとっても大人にとっても、自分自身の心と静かに向き合い、日常でついてしまった汚れを洗い流すための大切な場所なのだと改めて感じながら、23名の子供達との寺子屋体験がスタートしました。
次回は、心のお掃除の実践である「坐禅」の様子を紹介いたします。


