
力を入れて続けてきた行事を中止にするのはとても辛いことです。
私自身もコロナウイルスが広がったとき、多くの方にご協力いただき、全力で毎年取り組んできた、小学生が1日をかけてお寺を体験する「寺子屋体験」や子供坐禅会を中止せざるを得ないときに涙を流して悔しい気もちになったことを覚えています。
臨済宗円覚寺派の管長猊下(げいか)である横田南嶺(よこたなんれい)老師も多くの方が集まる坐禅会を精力的に開催していましたが、新型コロナウイルスが感染拡大したとき、やむなく中止にをする決断をされました。
しかし、この時の心境を管長猊下は
「雨が降ったら傘をさすでしょ。それと同じようにコロナが広がったから坐禅会を中止にした。ただそれだけですよ。」
と話してくださいました。
雨が降れば傘をさす。ただそれだけなのです。
雨に向かって文句を言ったり、悔しい思いを何かにぶつけながら傘をさすのではありません。
なんのこだわりもなく、雨を受け入れ、受け止め、受け流すように、苦しみとの向き合い方を伝えてくださった言葉です。
禅の言葉に
無事是貴人【ぶじこれきにん】
という言葉があります。
こだわりのない生き方(無事)をすることが、生まれたときから備わっている尊い仏様の心を実感すること(貴人)なんだ、ということを表現しています。
雨が降ったら恨みごとなんて言わずに、さっと傘をさす姿はまさに「無事是貴人」であります。
もちろん、傘をさせば防げる雨ばかりではありません。
傘が役に立たないほどの暴風雨に見舞われることもあります。
そんな時はどうしたらよいのでしょうか。
無理をしないで、安全な建物の中に避難をしたり誰かに助けを求めることも大切です。
傘をさせるなら傘をさし、避難ができるなら避難をし、助けを求めるなら臆することなく助けを求める。
今、自分にできることを尊い心で精一杯にしていくことが「無事是貴人」です。
雨が降ったら傘をさし、雨が止んだら傘をとじる。
東光寺でもコロナで中止になった様々な行事が順次再開されています。
そして、いよいよ「寺子屋体験」が再開されます。
「今、できることを精一杯」
参加する子供達と、目一杯楽しませていただきます。