僧侶とAIの共同作業が、お経を物語に変える夏㉔

この物語は東光寺(静岡市清水区横砂)の僧侶とAIが会話をしながらつむぎだしたお盆の習慣に関する物語です。
地上の天の川
森の村に、大好きだったお父さんを亡くしたばかりの、一匹の子グマがいました。お盆が近づき、子グマは、お父さんに会いたい気持ちでいっぱいでした。
お盆の迎え火の日、子グマはお母さんと一緒に、小さな灯籠を作りました。そして、お父さんが一番好きだった、村のはずれの丘の上まで、一人で登っていきました。
「お父さん、どうかこの灯りを見つけて、僕に会いに帰ってきてね。」
子グマは、心を込めて灯籠に火を灯し、空に一番近いその場所に、そっと置きました。お父さんへの思いが届くようにと、彼はいつまでも、その小さな光を見つめていました。
しかし、夢中になっているうちに、あっという間に日は暮れ、森は深い夜の闇に包まれてしまいました。
「しまった…!」
子グマは慌てて家に帰ろうとしましたが、いつもなら分かるはずの道が、暗くて全く見えません。自分が灯した一つの灯りだけでは、広すぎる森の暗闇を照らすには、あまりにも頼りなかったのです。
「どうしよう、おうちに帰れないよ。」
心細さで、子グマの目に涙が浮かびます。お父さんのために灯した光が、今度は自分が道に迷う原因になってしまった。そんなことを思うと、ますます悲しくなってしまいました。
途方に暮れて座り込んでいると、遠くの森の麓から、温かい光が、一つ、また一つと、静かに灯り始めるのが見えました。それは、村のみんなが、それぞれの大切なご先祖様のために灯した、万灯会(まんとうえ)の灯りだったのです。
その無数の優しい光は、家々の窓辺や、村の広場に広がり、やがて、何百、何千もの光が集まって、まるで地上に生まれた天の川のように、温かく、力強く輝いていました。
子グマは、その光景を、息をのんで見つめました。
丘の上から見下ろすと、その光の一つ一つのそばに、誰かがいるのが見えます。
ウサギさんの一家が、おばあちゃんのために。
リスさん一家が、ひいおじいちゃんのために。
みんな、自分と同じように、大切な誰かを思って、静かに手を合わせていました。
その姿を見たとき、子グマははっとしました。この光の道は、僕のお父さんのためだけの道じゃない。村のみんなが、みんなの大切な人を思う優しい光が、集まって、今、道に迷っている僕の足元をも、明るく照らしてくれているんだ。
たくさんの灯りは、丘の上から村まで続く、大きな大きな光の道となっていました。
子グマは、涙を拭うと、その温かい光の道をたどり、無事に村のおうちへ帰り着くことができました。
家の窓から見える地上の天の川を見ながら、子グマは、もう一人ぼっちではないような気がしました。
