僧侶とAIの共同作業が、お経を物語に変える夏

 

 

 

この物語は東光寺(静岡市清水区横砂)の僧侶とAIが会話をしながらつむぎだしたお盆の習慣に関する物語です。

 

おじいちゃんの道しるべ

 

遠い遠い世界へ旅立ったばかりの、一人のおじいさんがいました。

おじいさんは、地上に残してきたかわいい孫のことが、心配でなりませんでした。
 

「あの子は、わしがいなくて、泣いてはいないだろうか。一目でいいから、元気な顔が見たいものじゃ。」

 

気がつくと、周りには同じように、地上に戻りたがっているご先祖様たちが、たくさん集まっていました。

もうすぐお盆です。一年に一度だけ、家族の元へ帰ることができるのです。

 

 

ご先祖様たちは、それぞれ地上の家族が灯してくれた「お迎えの灯り」を探し始めました。

空には、村中のみんながお金を出し合って打ち上げた、色とりどりの豪華な花火が、夜空を昼間のように照らしています。
あるご先祖様の道には、お金持ちの息子が灯した百個もの提灯が煌々と輝く光の道を作っていました。
また別の道には、村の長者が灯した、大きな松明が燃え盛っていました。

 

「ほうら、うちの息子はたいしたもんじゃ!」

「さすがは我が一族じゃ!」

 

ご先祖様たちは、それぞれのきらびやかな光の道を、自慢げに帰っていきます。

しかし、おじいさんを導く光は、どこにも見当たりません。

 
「わしの家は貧乏じゃったからなあ。孫に、立派な飾り付けをする余裕などないのかもしれん。」

 
おじいさんは、がっかりして、しょんぼりと肩を落としました。

その時です。たくさんのまぶしい光の、ずっとずっと向こうに、まるで夜空にまたたく一番星のように、小さく、しかし、けなげに輝く一つの光が見えました。

 

「あれは…?」

 

おじいさんは、その小さな光に、不思議と強く心を惹きつけられました。まるで、その光がおじいさんの名前を呼んでいるかのようでした。


導かれるように、おじいさんが光のそばまで行ってみると、そこには、たった一本の小さなロウソクがありました。その前で、孫が小さな手を合わせ、じっと座っています。

「おじいちゃん、これがぼくのお迎えの灯りだよ。おじいちゃんが道に迷わないように、心を込めて火を灯したんだ。どうか、この光を見つけて、帰ってきてね。」

 

孫の隣でお母さんが優しく言いました。
 

「大丈夫よ。一番大切なのは、あなたがおじいちゃんを思う温かい心なの。その心は必ずおじいちゃんに通じるわよ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、おじいさんの目から、温かい涙がこぼれました。孫の真心がこもったそのたった一つの光が、おじいさんの心の中を、何よりも温かく、そして明るく照らしてくれたのです。

 

 

 

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