僧侶とAIの共同作業が、お経を物語に変える夏

 

 

 

この物語は東光寺(静岡市清水区横砂)の僧侶とAIが会話をしながらつむぎだしたお盆の習慣に関する物語です。

 

モクレンさんとお母さん

 

 

昔々、お釈迦さまのお弟子様に、モクレンさんという方がいました。モクレンさんは、修行によって「神通力」という不思議な力を得て、遠い遠い世界のことまで見ることができました。

 
モクレンさんには、先に亡くなったお母さんがいました。
お母さんは、とても優しく、モクレンさんのことを誰よりも深く愛してくれる、素晴らしい人でした。モクレンさんが修行の道を志した時も、いつも陰から応援してくれていました。

 

「お母さんは、今頃どこで、どうしているだろうか。あれほど優しい人だったのだから、きっと、極楽で幸せに暮らしているに違いない」

 

モクレンさんは、神通力を使って、お母さんのいる世界を見てみることにしました。しかし、お母さんは、極楽にはいませんでした。お腹をすかせた者たちが集まる、暗くて苦しい「餓鬼道」という世界に落ちて、骨と皮ばかりに痩せ細り、苦しんでいたのです。

 

「お母さん!なんということだ・・・」

 

モクレンさんは、いてもたってもいられなくなり、自分の鉢にご飯をいっぱいに入れると、神通力でお母さんの元へ届けました。

 

「お母さん、ご飯ですよ!さあ、たくさんお食べなさい。」 

 

お母さんは、久しぶりのごちそうを見て、目を輝かせました。
しかし、お母さんは、周りにもお腹をすかせた人たちがたくさんいるのに、誰にも分け与えようとはしませんでした。そして、急いでご飯を口に運んだ、その瞬間です。ご飯は見る見るうちに燃え上がり、真っ赤な炭のかたまりに変わってしまったのです。

 

「ああ、熱い!熱いよ!」

 

お母さんは、炭を食べることもできず、ますますひどい飢えと渇きに苦しむことになりました。
その様子を見たモクレンさんは、涙を流しました。自分一人の力だけでは、お母さんを救うことはできないのだと悟ったのです。

モクレンさんは、お釈迦さまの元へ駆け寄り、泣きながら尋ねました。

 

「お釈迦さま、私の母は、誰よりも優しい人でした。どうして、あのような苦しい世界にいるのでしょうか。そして、私はどうすれば、お母さんを救うことができるのでしょうか。」

 

すると、お釈迦さまは静かに答えました。

 

「モクレンよ、おまえのお母さんが餓鬼道に落ちたのは、罪を犯したからではない。おまえを深く愛するあまり、その祈りが『どうか、私のかわいい息子だけが幸せになりますように』という、少しだけ閉じたものになってしまったからなのじゃ。

 
おまえ一人の力では救うことはできまい。だが、方法はある。修行を終えるすべての清らかな修行僧たちのために、たくさんのごちそうをお供えしなさい。多くの人々の幸せを願うその尊い行いが、おまえのお母さんの心を解き放ち、苦しみから救う大きな力となるのだ。」

 
モクレンさんは、その教えをありがたく受け止め、すぐに行動に移しました。たくさんのごちそうを用意し、修行を終えた多くの修行僧に、感謝の気持ちを込めてお供えしました。

 
すると、奇跡が起こりました。
モクレンさんがもう一度、お母さんのいる世界を見てみると、お母さんの周りには、美しい花が咲き乱れ、お母さん自身も、穏やかで満ち足りた表情で、にこやかに微笑んでいたのです。

 

自分一人のためではなく、多くの人々と、善い行いを分かち合うこと。その尊い功徳が、ついにお母さんを苦しみの世界から救い出してくれたのです。
このモクレンさんの行いが、今の私たちのお盆の始まりだと言われています。お盆にご先祖さまのためにお供えをし、お参りをするのは、この時の感謝と分かち合いの心を、今に伝えているのです。

 

 

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